義経を慕う静の舞。義経の妾「静」は、磯の禅師の娘で、元京の白拍子であったが、義経が頼朝に忌まれて逃亡するや、吉野まで従い、寺僧に捕らえられて鎌倉に送られた。その道行きから、頼朝の所望により舞を舞うくだりを舞踊化したもの。

NHKの大河ドラマ「義経」が放映されていますが、この「義経」たる人物、日本人にとって、どんなにか魅力的な人なのでしょう。しかし私達女性の立場から見ると、その愛妾であった、静御前こそ惹かれるキャラクターなのです。静は白拍子(平安末期から鎌倉時代にかけて行われた歌舞。またこれを舞い唄う遊女。)ですが、義経と恋に落ち、追いかけて行く「おんな心」が、能や無踊で表現されています。

吉野山、峰の白雪ふみわけて、峰の白雪踏み分けて、入りにし人ぞ恋しき・・・

と切ない唄で始まるこの曲、おんな心が切々と感じられます。とても強い心を持った女性だったのでしょう。涙をこらえて頼朝に挑もうとするのですが、そこは白拍子という身の上、あまり強行に直訴もできなかったのでしょう。鎌倉の鶴ケ岡八幡宮で

賤や賤しづの小田巻くりかえし~

と頼朝の前で舞うのです。皆の前に引き出され舞いたくもなかったでしょう。しかし「えい!」と気合を入れて、一歩を踏み出したのしょうね。そうこうしているうちに

鎌倉山の星月夜、いつしかくもりおもわずも、千代を契りし仲・・・・

と回想のラブシーンになり、義経への激し思いをこめ、謳いあげ、テクニック的にいえば踊りこんでゆきます。構成としてはクレッシェントになり「わっ!」と終わるものでしょうか。「静」の最後はよく分からないそうですね・

・・その辺、創りたい

思いに駆り立てられる題材です。

西川流の振りは素踊り形式になっているのですが、今回の瑞扇会(踊り 西川瑞乃 ギャラリー瑞扇会でご覧になれます。)ではビジュアル的に美しく見られるように衣裳を付けての上演にしました。

従って装置も高欄と松、桜を飾り、鎌倉八幡宮前舞楽殿上の場とし、第一景の鎌倉近くの街道は先の道具の前に白紗しろしゃを下ろす方法をとりました。

衣裳は朱色綸子地に箔置きの着付、その上に白地の小袿こうちきを付け塗市女笠ぬりいちめがさに銀杖を持ち、古代ツツカケ(草履)を履いて登場します。
かつらは「かしき」と呼ばれるものです。
八幡宮に着いて法楽舞の場は、小袿こうちきを腰に巻いて金烏帽子えぼしを付けて舞い、義経への想いを表現するくだりから烏帽子えぼしをはずしての踊りになります。