振付師としての私は、現在二つの形に分かれています。
その一つは、商業舞台での、芝居の流れの中で必要とされている踊りや舞。またショーの踊り。新劇や小劇場での踊り。テレビドラマでの踊り。
ここで必要とされるものは、例えば劇中であれば、その流れを壊さないこと。芝居振りであればとってつけたようなものはいけませんでしょう。
ショーの場合は華やかに楽しく理屈のいらないもの。そしてどんなに古いことを現したいパートでも「今」を感じるもの。その為には演出家と密にコミュニケーションを取りながらの作業でなくてはならないと思います。
また座長公演であったりしたら、当然座長の想いが色濃く反映されるべきだと思います。
さあ、では踊り手の存在はどうでしょう。それが俳優であれば当然キャラクターを活かしたものを考えなくてはなりません。またその中でもソロとユニゾンでは全く異なります。脚本が上がり、打ち合わせをし、曲が出来上がり、そして振りつけに入ってゆきます。脚本を読んだ段階で構想を練っておかないと、打ち合わせの時に衣裳やかつらの希望が出せませんし装置の注文もある程度はする必要があります。ある程度というのは、決定までに何度もミーティングが必要になるので、最初の考えが根本は違わないまでも変化してゆくからです。
戦いはここからが激しくなります。
自分のどうしてもやりたいことを押し進めてゆくにはエネルギーがかなりいります。私は日本舞踊というジャンルですから、観客に対して「和」の良さを強調したい訳です。洋楽で踊ろうと、和洋折衷の衣裳で踊ろうと、日本の美を全面に押し出したいのです。
さて他の一つの形は、自分の世界を創造する時の自分が表現する踊りや舞の振付です。
古典の世界が好きで舞踊家になったのですが、それと平行して自由な発想の元に舞踊化したい作品があるので、それをプロデュースします。私は絵画、小説、音楽に刺激を受けるとどうしても踊りたくなってしまいます。
しかし自作自演ではひとりよがりのものなってしまうので、必ず脚本家や演出家に入っていただきます。ここでの振付の作業の困難さは、踊り手が自分なので、いつまでも直したくなってしまうということでしょうか。そうなると結局は即興のようになってしまうので、早くに決定できるよう充分時間をとることを心がけています。創作舞踊というとどうしても現代舞踊風になってしまいがちですが、手法はあくまで日本舞踊にこだわって作ります。
作品によっては、というか好みからクラシック音楽を使用することが多いですが、なににせよ古典同士は会うものです。ですから外国でも歴史ある建物では「和」の踊りはぴったりだと思います。他のものでは西洋のもの大好きですが、日本舞踊家としては、あくまで「和」にこだわってゆきたいと思います。