「瑞扇会」より

「花柳春の会」演目紹介

「夜の梅」 藤十郎の恋 長田幹彦=作詞 清元栄寿朗=作曲

舞踊会では通常「大和樂」で演奏されますが、今回は「清元」にて踊ります。

これは、会主の花柳春師が25年前に、今は亡き長谷川一夫先生の演出で共演された時、長谷川先生のご要望で「清元」でなさったことからそのまま伝承頂く意味でも「清元」さんにお願いいたしました。

空解けの 帯も悲しや 夜の梅〜 

と洒落た文句で始まりますが、曲もまた艶のある節まわしです。

江戸元禄の末、京阪きっての人気役者、坂田藤十郎は江戸歌舞伎に挑戦するものの、芸に悩みを抱えている時、近松門左衛門に会い「形」より「色・艶」を表現することを勧めらます。そして近松の書いた台本により稽古が始まりますが思ったように役作りができません。

日頃から一座の面倒を見ている料亭「日野屋」の主、清右衛門とおかみのお梶は親身になります。ほのかに藤十郎に想いを寄せるお梶に恋をしかける藤十郎。

今回の演出は、藤十郎がいわゆる「おさん茂兵衛」の台本を持って、料亭の庭に駆け込んでくるところから始まります。誰もいないと思っていた部屋に人の気配を感じ、お梶はそっと燈をかざし、それが藤十郎とわかると行灯に燈を灯します。

嘘のかたまり 誠の情 この真中にかきくれて〜

と、口説かれ人妻であるお梶は震えるのです。その様子をじっと観察する藤十郎。

本心からか?誠の恋かと迷った末お梶は心を決めます。フッと燈を吹き消したとたん、藤十郎は動揺し震える手で羽織と台本を持って庭先より逃げ出します。

暗い部屋には残された袱紗が・・・・

お梶はそれを手に取り裸足で追いかけようとしますが、悲しさのあまり泣き伏すのです。

芸が命の 俳優(わざおぎ)の 心と知らで 身を捨てて〜

と、この時代不義密通は大罪、それ程の想いを芸に利用されたと知ったら、命をかけますよね・・・

でも舞踊では悲劇を美に変えて、できたらうす〜い紗をかけて表現したいものです。

道具立ては、舞台中に屋台を組み、庭には上手、下手両側に白梅、下手の梅の下には灯篭と、朱の毛氈のかかった床几。部屋の中には瓜行灯、この行灯と藤十郎の持って出る羽織がストーリー展開には重要な役割を果たします。
舞台の上にお家が一軒建つのですから、ちょっとドラマチックです。